複式簿記は、会社で活用されているので、複式簿記の考え方を理
解すると、これまで敬遠していたビジネスへの視野が広がることに
なるし、ビジネスパースンの知的パワーを広げることにもなりま
す。
会社では、商品の仕入れや販売、製品の製造や販売などのすべて
の取引行為が、複式簿記と関係しています。たとえば、会社の車
を使って、ガソリン代1万円を現金で支払った場合には、損益計
算書に費用科目として車両関係費1万円を計上し、貸借対照表に
資産科目の現金1万円を計上(減少)します。
また、得意先から注文がとれ、商品50万円を掛けで売った場
合には、損益計算書に収益科目として売上50万円を計上し、
貸借対照表に資産科目として、売掛金50万円を計上します。
車両関係費と現金、売上と売掛金というように、科目を通じて
二つの報告書はそれぞれつながっています。ですから、会社の
経営状況を見極めるには、科目の処理方法を正しく認識する必
要があります。
この科目の処理方法を複式簿記では「仕訳」と言っています。
したがって、仕訳が分かれば決算書が読めると言えます。
現在、伝票入力さえすれば、複式簿記の知識がなくても、パソ
コンの助けを借りればすべて計算してくれ、帳簿から決算書ま
でプリントアウトしてくれます。また、より詳しい経営に関す
る分析資料も出力することができます。しかし、伝票入力をす
るときの科目の処理方法(仕訳)を知らないと、せっかく揃っ
た決算書や経営の分析資料を十分に使いこなすことはできませ
ん。
今、そういう人が増えているのは事実です。複式簿記の科目の
処理方法(仕訳)の知識がなければ、これらの資料も宝の持ち
腐れになってしまいます。
「仕訳」が分からなければ、決算書を読むことはできません。
「仕訳」とは、取引を記録する方法のことで、通常、会社の複
式簿記では、左側を「借方」、右側を「貸方」と言う簿記用語
を使って仕訳をしています。
例えば、ガソリン代1万円を現金で支払った場合には、下記の
ように仕訳されます。
借 方(左 側) |
貸 方(右 側) |
車両関係費 10,000円 |
現 金 10,000円 |
また、営業マンが、自社の商品を販売するために、会社を一歩出
たとします。会社から得意先まで会社の車を使用したとすると、
ガソリン代は車両関係費、車の減耗は減価償却費となります。
商品の注文が取れたときは、注文請書を書きますが、その用紙は
消耗品費になります。さらに、商品を納品して納品書を発行し、
売上伝票で売上を計上する場合でも、売上代金の回収方法が、
現金の場合は現金売上、月末締めの翌月末払いの場合には
売掛金売上になります。
このように、複式簿記は会社のすべての取引を、原因と結果とい
う二つの側面から把握していきます。ガソリン代を現金で支払っ
た場合にはガソリン代という費用科目が発生しますが、一方で同
じ額だけ現金が減少します。この原因と結果という二つの側面を
記録し、集計し、決算のときに貸借対照表と損益計算書に分けて
作成するシステムが、複式簿記のシステムです。
このように見てくると、ビジネスパーソンとして行動しているこ
とのすべてが、複式簿記と関係しています。複式簿記の基本的な
考え方が分かっていないと、なぜこのような処理をするのか、ま
た、正しい処理はどうすればよいのか、判断することはできませ
ん。複式簿記の知識は、会社に関係している人の「基本」であり
、「常識」であると言えます。
社会人になると、「会社では、せめて複式簿記3級程度の知識が
必要だよ」と言われます。現在、複式簿記の検定試験には、学生
を含めて毎年数十万人の人が受験していると言われます。
もし、複式簿記を勉強したことがないとか、良く理解できていな
いというなら、ぜひ、複式簿記の考え方を身につけて、ビジネス
に役立てて欲しいと思います。
|