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   本の紹介

 

                    「 家 庭 簿 記 」 入 門

                          

    はじめに

最近、あなたは、自分の日常生活に目を向けたことはありますか?

生活をしていると、日々、必ずお金やものの出入りがあります。例えば、スーパーの食品売り場で、今晩のおかずにお肉と野菜を買って、その代金として現金1,000円を支払ったとします。このとき、あなたは、現金1,000円を使ったので、現金が1,000円減ったということだけで済ませていませんか。また、この代金をカードで支払った場合、どのように考えますか。

ここで、あなたが、家庭生活におけるお金やものの出入りが、家庭の財産にどのような影響を与えるのかを理解していれば、お肉と野菜を買った代金の支払方法によって、家庭の財産に与える結果がどんなに違うかを予測することができます。

 

従来、お金やものの出入りを記録するための方法として、お小遣い帳や家計簿が利用されてきました。しかし、経済が発達し、現金だけでなくカードによる取引とかインターネットによる取引など取引が複雑になった現在、いままでのような、お小遣い帳や家計簿では対応が難しくなってしまいました。

 

そこで、この変化に対応したお金やものの出入りを記録するための方法として「家庭簿記」を考えました。

 

「家庭簿記」とは「家庭用複式簿記」のことで、会社が行っている複式簿記を、家庭で楽に有効に行えるようにしたものです。

 

では、なぜ、いま、「家庭に複式簿記」が必要なのでしょうか?

それは、複式簿記が人間の経験と知恵によって作られた最高傑作のひとつであり、いまこそ、家庭において複式簿記を大いに活用して、幸せをつかむべき時代だからです。

この本は、家庭簿記を使って、健全な家庭の基礎となる「家庭決算書」の作り方を、やさしく解説した本です。

 

複式簿記は、難しくありません。

    前ページの例を取り上げてみましょう。

スーパーへ行って、今日のおかずにお肉と野菜を買って、その代金として現金1,000円を支払いました。このとき、お小遣い帳や家計簿だとお肉と野菜の食料費に現金1,000円を使ったので、現金が1,000円減ったということだけを考えます。

 

しかし、この買い物は、次のように考えることができます。お肉と野菜を入手したという一面と、現金が減少したという一面に分けて考えてみるのです。

すなわち、

 

    1.肉と野菜が1,000円増加した

.現金が、1,000円減少した

 

という2つの面から考えるのです。

そして、つぎに、この2つの面を、複式簿記の約束ごとに従って、

 

左方(ひだりかた)         右方(みぎかた)

肉と野菜(食料費)1,000円  /  現金 1,000円

 

のように、表します。

  

  次に、この消費があなたの財産にとってどんな意味があるのかを考えます。

昨日のあなたの全財産が、現金だけで5,000円だったとします。

きょう、あなたは、お肉と野菜に1,000円使ったので、全財産は、4,000円になってしまいました。

 

これを家計簿では、次のように表示します。

 

       現 金(昨日の残高) 5,000円

       現金支出(食料費)  1,000円

       現 金(今日の残高) 4,000円

 

一方、これを次のように表示することができます。

             

昨日の財産対照表

左方(ひだりかた)

右方(みぎかた)

資産(現 金)

,000円

負 債  0円

正味財産

  5,000円

 

今日の財産対照表

左方(ひだりかた)

右方(みぎかた)

資産(現 金)

,000円

負 債  0円

正味財産

  4,000円

 

    今日の消費損益計算書

 

       収 入       0円

      消費(食料費) 1,000円

      当期消費損益 ―1,000円

 

これは、収入が無いのに、食料費に1,000円消費したので、財産が1,000円減少したことを表しています。

 

また、お肉と野菜の代金を、現金ではなくカードで支払った場合には、次のように表されます。

 

        昨日の財産対照表

左方(ひだりかた)

右方(みぎかた)

資産(現 金)

,000円

負 債  0円

正味財産

  5,000円

 

    これは、現金で支払った場合と同じです。しかし、

   今日の財産対照表は、次のように表します。

 

         今日の財産対照表

左方(ひだりかた)

右方(みぎかた)

資産(現 金)

,000円

負債(カード未払金)  

,000円

正味財産

,000円

    

今日の消費損益計算書

 

        収 入       0円

       消 費(食料費)1,000円

      当期消費損益 ―1,000円

    現金で支払った場合と、表し方は変わりません。

このように、家庭生活におけるお金やものの出入りを記録して、家庭の財産の状況や消費損益を明らかにするための報告書(家庭決算書)を作れば、財産が増えたのか減ったのか良く分かり、もっと財産を増やすためには、そして、将来の夢を実現するためには、どこをどうやって工夫すればよいのかという、計画を立てるのに役立ちます。

 

家庭経営の目的は、健全な家庭を築くことであり、健全な家庭を維持、向上、発展させていくことです。この目的を達成させるための有効な方法が、家庭経営に家庭決算書を活用することだと確信しています。

 

     この本を読めば、家庭の財産と損益の状況を表す報告書(家庭決算書)がどのようにして作られるか、その方法を容易に理解できることと思います。そして、家庭経営にこの家庭決算書を有効に利用することができるようになります。

 

この本は、筆者自身の考え方に従がって、左方(ひだりかた)、右方(みぎかた)という簿記用語を用いた「家庭簿記」(家庭用複式簿記)について書いたものです。

この本に関する、読者の方々のご意見、ご指導、ご鞭撻をいただければ、うれしく思います。

 

2009年6月             依田宣夫

                  

「家庭簿記」入門

目   次

 

はじめに

 

第1章 家庭簿記(家庭用複式簿記)とは・・・15

.家庭と会社の関係         ・・・15

(1)報告書          ・・・15

(2)複式簿記         ・・・16

     2.家庭簿記(家庭用複式簿記)を利用した

    家庭決算書の作成手順      ・・・19

   事実について         ・・・21

   家庭決算書の2つの報告書   ・・・21

(1)   財産対照表      ・・・22

(2)   消費損益計算書    ・・・22

.家庭簿記(家庭用複式簿記)とは  ・・・23

    (コラム)「真実の情報」     ・・・26

 

第2章 勘定科目と仕訳        ・・・27

.家庭簿記(家庭用複式簿記)の5つの

キーワード            ・・・27

.勘定科目と仕訳          ・・・30

.勘定科目の2つのルール      ・・・32

(1)   勘定科目「左右グループ分け」の

ルール         ・・・33

(2)   勘定科目「増加」・「減少」の

仕訳のルール       ・・・34

.財産対照表の勘定と勘定科目    ・・・37

(1)資産勘定と勘定科目   ・・・38

(2)負債勘定と勘定科目   ・・・40

(3)正味財産勘定と勘定科目 ・・・42

.消費損益計算書の勘定と勘定科目  ・・・43

(1)収入勘定と勘定科目   ・・・44

(2)消費勘定と勘定科目   ・・・46

  (3)消費損益計算書の当期

     消費損益とは      ・・・50

(コラム)「科目設定」     ・・・52

 第3章 家庭の個別の会計取引を「仕訳」する・・53

 1.資産勘定の個別の会計取引を仕訳する・・・53

.負債勘定の個別の会計取引を仕訳する・・・56

.正味財産勘定の個別の会計取引を仕訳

する             ・・・58

.収入勘定の個別の会計取引を仕訳する・・・59

.消費勘定の個別の会計取引を仕訳する・・・61

 

第4章 仕訳をまとめる         ・・・64

.家庭簿記の帳簿          ・・・64

.総勘定元帳で仕訳をまとめる    ・・・66

.試算表を作る           ・・・69

 

第5章 決算             ・・・72

.決算整理             ・・・72

.精算表を作る           ・・・75

.家庭決算書(決算報告書)を作る  ・・・80

 

おわりに               ・・・85