家庭決算書の作り方を、やさしく解説した本 「家庭簿記」入門 第 5 章 公認会計士・税理士・AFP 依田宣夫 著
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第5章 決算
1.決算整理
2.精算表を作る
3.家庭決算書(決算報告書)を作る
1. 決算整理
決算は、1年に1回、すべての帳簿を締めて、家庭決算書を作り、
家庭の財産状態と消費損益を正しく報告することを言います。
決算報告書は、1年間という期間(会計期間)を区切って作るので、
そのための準備が必要となります。この準備のことを決算整理といいます。
また、家庭における決算報告書である家庭決算書は、給与所得者が
対象なので、1年間という会計期間を1月1日から12月31日までと
しています。
報告書ができるまでの流れは、次のようになっています。
会計事実 →仕訳 →総勘定元帳 →試算表 →決算整理 →精算表→報告書
(分類・転記)(集計) (家庭決算書)
決算整理について説明しましょう。
決算整理とは、決算にあたり総勘定元帳の勘定記録に一定の修正を加え、
正しい残高にするための手続きのことを言います。
その理由は、総勘定元帳の各勘定残高が、決算日における正しい残高に
なっていないからです。この決算整理は、家庭においては、不動産、自動車、
有価証券の時価評価や各種会員権、書画、骨董などの売却可能な高額品について、
資産の評価替えをすること、および受取利息や支払利息、電気代やガス代などの
水道光熱費や通信費などの収入、消費の見越し計上、繰り越し計上があります。
また、決算整理に当たっても、資産の評価損益などの取引を2つの側面から
とらえて、仕訳のルールに従って仕訳をします。
次に、家庭における決算整理について、有価証券について見ていきましょう。
有価証券の評価についての心得は、次のとおりです。
有価証券の時価は絶えず変動しています。決算にあたり有価証券の帳簿価額を
期末の時価(市場価格)に修正することを有価証券の評価替えといいます。
帳簿価額より期末の時価(市場価格)が低い場合の差額は、有価証券評価損と
いい、帳簿価額より期末の時価(市場価格)が高い場合の差額は、有価証券
評価益といいます。
例えば、決算にあたりA社の株式の帳簿価額が200,000円、期末の時価
(市場価格)が150,000円の場合の差額50,000円は、評価損となります。
有価証券(資産)が50,000円減少した →右 方(みぎかた)
有価証券評価損(特別消費)が50,000円増加した→左 方(ひだりかた)
(仕 訳)
(左 方) (右 方)
有価証券評価損 50,000円 / 有価証券 50,000円
また、決算にあたりA社の株式の帳簿価額が200,000円、期末の時価
(市場価格)が300,000円の場合の差額100,000円は、評価益となります。
有価証券(資産)が100000円増加した →左 方(ひだりかた)
有価証券評価益(特別収入)が100000円増加した→右 方(みぎかた)
(仕 訳)
(左 方) (右 方)
有価証券 100,000円 / 有価証券評価益 100,000円
2.精算表を作る
精算表は、決算整理前の残高試算表から、財産対照表と消費損益計算書
を作成する過程を1つの表にまとめたものです。決算によって、財産対照表
と消費損益計算書を作成するわけですが、決算に誤りがないように、あらか
じめ表の上で財産対照表と消費損益計算書を作成してみるのです。
精算表を作成することにより、これから行う決算手続きの概要を把握し、
手続きを正確に進めることができます。
精算表は、金額を記入する欄の数により、8桁精算表、10桁精算表などが
あります。ここでは、8桁精算表について説明します。
8桁精算表は、残高試算表欄、整理記入欄、消費損益計算書欄、財産対照表欄
から構成されています。残高試算表の諸勘定に決算整理による修正を加えて、
財産対照表の勘定と消費損益計算書の勘定に2分して、当期消費損益を求める
仕組みになっています。
残高試算表の各勘定科目の金額が、次表の残高試算表のとおりとします。
残高試算表
|
|
||
勘定科目 |
左 方 |
右 方 |
|
|
現金 |
50 |
|
|
普通預金 |
350 |
|
|
マンション |
1500 |
|
|
有価証券 |
350 |
|
|
車両 |
130 |
|
|
住宅ローン |
|
2000 |
|
カード未払金 |
|
10 |
|
家族財産 |
|
100 |
|
留保財産 |
|
203 |
|
給料 |
|
300 |
|
賞与 |
|
50 |
|
所得税等 |
70 |
|
|
食料費 |
140 |
|
|
通信費 |
50 |
|
|
水道光熱費 |
16 |
|
|
支払利息 |
7 |
|
|
合計 |
2663 |
2663 |
残高試算表の各勘定科目の残高金額は、左方(ひだりかた)には、資産
と消費、右方(みぎかた)には、負債、正味財産、収入が記入されます。
このとき、左方(ひだりかた)の合計金額と右方(みぎかた)の合計金額
は一致します。
残高試算表の収入に属する勘定の金額を消費損益計算書の右方(みぎかた)
欄に、消費に属する勘定の金額を左方(ひだりかた)欄に記入します。
消費損益計算書の収入合計と消費合計を計算し、収入合計から消費合計を
差し引いて当期消費損益を計算します。
次に、残高試算表の資産に属する勘定の金額を財産対照表の左方(ひだりかた)
欄に、負債および正味財産に属する勘定の金額を右方(みぎかた)欄に記入します。
財産対照表の左方(ひだりかた)欄の合計と右方(みぎかた)欄の合計を
計算し、左方(ひだりかた)と右方(みぎかた)の合計金額を差し引いて当期
消費損益を計算します。
また、決算にあたり有価証券の評価をしたところ、A社の株式の帳簿価額が
350、期末の時価(市場価格)が300の場合の差額50は、評価損となりました。
この場合の仕訳は次のようになります。
有価証券(資産)が50減少した →右 方(みぎかた)
有価証券評価損(特別消費)が50増加した→左 方(ひだりかた)
(仕 訳)
(左 方) (右 方)
有価証券評価損 50 / 有価証券 50
この結果、精算表は次のとおりになります。
精 算 表
|
勘定科目 |
残高試算表 |
整理記入 |
消費損益計算書 |
財産対照表 |
||||
左方 |
右方 |
左方 |
右方 |
左方 |
右方 |
左方 |
右方 |
||
|
現金 |
50 |
|
|
|
|
|
50 |
|
|
普通預金 |
350 |
|
|
|
|
|
350 |
|
|
マンション |
1,500 |
|
|
|
|
|
1,500 |
|
|
有価証券 |
350 |
|
|
50 |
|
|
300 |
|
|
車両 |
130 |
|
|
|
|
|
130 |
|
|
住宅ローン |
|
2,000 |
|
|
|
|
|
2,000 |
|
カード未払金 |
|
10 |
|
|
|
|
|
10 |
|
家族財産 |
|
100 |
|
|
|
|
|
100 |
|
留保財産 |
|
203 |
|
|
|
|
|
203 |
|
給料 |
|
300 |
|
|
|
300 |
|
|
|
賞与 |
|
50 |
|
|
|
50 |
|
|
|
所得税等 |
70 |
|
|
|
70 |
|
|
|
|
食料費 |
140 |
|
|
|
140 |
|
|
|
|
通信費 |
50 |
|
|
|
50 |
|
|
|
|
水道光熱費 |
16 |
|
|
|
16 |
|
|
|
|
支払利息 |
7 |
|
|
|
7 |
|
|
|
|
合計 |
2,663 |
2,663 |
|
|
|
|
|
|
|
資産評価損 |
|
|
50 |
|
50 |
|
|
|
|
当期消費損益 |
|
|
|
|
17 |
|
|
17 |
|
合計 |
|
|
50 |
50 |
350 |
350 |
2,330 |
2,330 |
3. 家庭決算書(決算報告書)を作る
次に、精算表から決算報告書、すなわち家庭決算書(財産対照表と
消費損益計算書)を作成します。
財産対照表と消費損益計算書は、決算の取引を科目ごとに分類・集計して
追加記入を行い、財産に関するものと消費に関するものとに区分して、前者
から財産対照表を作成し、後者から消費損益計算書を作成します。
「財産対照表」
すべての取引を科目ごとに分類・集計 |
|
財産が増減するもの |
|
資産・負債・正味財産 |
|
財産対照表の作成 |
財産対照表
左 方 |
金 額 |
右 方 |
金 額 |
(資産) 現 金 普通預金 マンション 有価証券 車両 |
50 350 1,500 300 130 |
(負債) 住宅ローン カード未払金 (正味財産) 家族財産 留保財産 当期消費損益 |
2,000 10 100 203 17 |
合 計 |
2,330 |
合 計 |
2,330 |
「消費損益計算書」
すべての取引を科目ごとに分類・集計 |
|
収入・消費が発生・消滅するもの |
|
収入・消費 |
|
消費損益計算書の作成 |
消費損益計算書
左 方 |
金 額 |
右 方 |
金 額 |
「消費」 (税金等) 所得税等 (日常生活費) 食料費 通信費 水道光熱費 (特別消費) 支払利息 資産評価損 当期消費損益 |
70 140 50 16 7 50 17 |
「収入」 給 料 賞 与 |
300 50 |
合 計 |
350 |
合 計 |
350 |
家庭決算書の報告形式には、勘定式と言われるものと、報告式と言われる
ものがあります。上記の形式を勘定式と言います。
また、報告式による消費損益計算書は、次のようになります。
(報告式の消費損益計算書)
消費損益計算書
「収 入」
給 料 300
賞 与 50
「消 費」
(税金等)
所得税等 70
(日常生活費)
食料費 140
通信費 50
水道光熱費 16
(特別消費)
支払利息 7
資産評価損 50
当期消費損益 17
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